北アルプス ランプの山小屋 船窪小屋

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8月10日(水)13℃ 晴

七倉の稜線をさわやかなそよ風が吹いています。
快晴の中、昨夜稜線で一夜を明かしたリピーターのわかめさんが今朝遅く到着してくれ、全員がホーッと息をつきました。彼女も連日のハードスケジュールで身体が疲れ、あと少しの処でビバークされてたもよう!でも無事到着してくれて、ほんとうに良かった…。
満天の星空の下、彼女は何を思い眠ったのでしょう。朝食をゆっくり食べ、今は静かに眠っています。

今月も10日となりました。6月25日入山以来、船窪小屋周辺は例事になく季節が早く進んでいるように思われます。七倉稜線上の雪渓はほとんど無く、お花畑の花々は満開となり、8月のきょうこの頃はクロマメの実も濃紫色に色づき、そろそろ食べ頃になりそうです。
入山当日にお花畑には生まれたてのヒナを6羽連れた雷鳥家族が遊んでいましたが、この頃は3羽連れの母子を見たという登山者からの情報が数件ありました。小屋のテラスから展望する這松帯には、数日前までホシガラスが松かさを食みに一日中来ていたのですが、急に来なくなりました。見渡すと、一面の這松帯に稔っていた松かさが一つも見つかりません。全部食べ終わって次の餌場へ移動したようです。這松帯を吹き渡るそよ風も、強風も何故か物足りない風に思えてくるのです。きっと、雷鳥も星空も熊の親子もこの季節のうつろいに戸惑っているのではないでしょうか?
船窪小屋な軒先を埋め尽くすように咲いていたコマクサ達も大分花が落ち新葉についた蕾達が可憐に咲き始めています。薬師岳のカールの万年雪もすっかり減り、秋近い頃の残雪が望める程です。

今シーズンは7月中天候が定まらなかった為か、お客様が少なく大変でしたが、先週末の8月6日7日は本来のように登山者が増え、今シーズン初めての定員超えとなりました。二人の小屋番娘と私と父さんは、ボランティア諸君や、久しぶりに来られた河西夫妻に助けられ、何とか乗り切ることができました。
今年は湿気が多く気温が高い故か、野菜類の傷みが早く、長く持つ筈のキャベツ迄くさりやすくなってしまい、茄子など半分が使えなくなりました!!
そこで思いきって、8年前迄使っていた岩室を復活しようと思い立ちました。丁度来て下さった「おさんぽさん」や河西氏に下見してもらったところ、「以前のままで底に敷いていた板も乾燥しているので使えます」とのこと。さっそく今回荷揚げされた野菜な半分を岩室冷蔵庫へ入れることにしました。小屋から50米上部にあるその場所へ、野菜を運び入れ、ブルーシートを被せて風雨から守れるようにしっかり造作してもらいました。
急な予定変更にも関わらず、皆さんの協力のもと、午前中に作業が終了しました。
8月4日から滞在していた孫の志保もお手伝い!!夏休みの自由研究の為登って来た孫も一人での滞在にすっかり飽きてしまったようで、ヘリな荷揚げが終わった後に、大阪へ帰られるシオ兄さまについてもらい下山することになりました。少し時間オーバーしましたが、七倉へ無事下山出来ました。この孫も今年小学6年生となり、祖父母共々その成長を喜んでいるところです。

今日も快晴で夏日の暑い一日となりそうですが、絶好の登山日和です。七倉尾根を往復される皆様、針ノ木〜船窪小屋〜烏帽子岳へ、そして船窪小屋から針ノ木谷〜平・黒部湖へいかれる皆様、今シーズンの夏の日々が好天に恵まれ、楽しく安全な山旅となりますよう切に願っております。
私も父さんも、ひろみ、しのぶの二人の小屋娘と共に精一杯の笑顔と心を込めた料理をつくり、囲炉裏とランプの灯をともし続けてお待ちしております。
皆様の夏の日が楽しく幸せでありますよう祈りつつ。

ーーー立山・剣・烏帽子岳・穂高連峰・槍ヶ岳
安曇平の夜景 降ってきそうな星空を眺め
甘酸っぱいクロマメ 想い出の写真ーーーの
船窪小屋にて 松澤寿子