北アルプス ランプの山小屋 船窪小屋

錦秋の紅葉本番

皆様、お変わりなくお過ごしでしょうか。私(寿子)もお父さん(宗洋)も、シーズン中元気に小屋番をさせていただいています。今年、船窪小屋は、現在のテント場に建てられた時(昭和29年)から数えて60周年を迎えました。この間、先代に与えられたこの地で60年間事故なく過ごさせていただけましたことに感謝しております。60年を振り返りますと、いろいろなことが想い出され、ペン先が震えてしまいます。若い頃、何も分からず山小屋生活に入り、周りの人々に助けてもらったこと。結婚以来子育てに追われ山小屋にはとても入って居られなかったこと。その間、夫宗洋を支え船窪小屋運営に手を貸してくれた友人や親しい人々。あの頃、皆様のご協力とお力がいただけたからこそ、今の船窪小屋が存在するのだと思います。そして、ここ20年程、下界を離れて山小屋に入れるようになりました。今年、私共二人揃って喜寿(77歳)となりました。人生矢の如し、とはよくぞ言ったものです。あっという間の歳月だったなぁと改
めて思い起こしています。今シーズンは雨が多く、思いのほか客足が伸びず、先シーズンを下廻りそうです。私は9月1日から久しぶりに休暇をもらい、稜線を歩いてみようと挑戦の山旅に出ることにしました。目的地は雲の平山荘です。勝野さんをリーダーに、烏帽子小屋までは、有川さん、まりさん、今ちゃんが私をサポートしながらついてきてくれました。船窪〜不動岳までは険しく歩きづらい稜線と言われ、私もお父さんと共に幾度となく道直しに不動岳まで往復した道です。自分の足で歩けるうちにと、今回はしっかり確認しながら歩いてみようと思いました。一昨日から小屋に滞在して居られた松下さんやお父さん、スタッフに見送られて、6時少し前に出発しました。お父さん、そしてトモ、しのぶ、里実の3人のスタッフがしっかり私の意図を汲んでくれて、「お母さん、大丈夫です。留守は任せて!」と、快く送り出してくれました。「それじゃ、行ってくるね!」余り良いお天気ではないけれど、雨は降っていません。ゆっくりペースで勝野さんの後について行きます。歩き易
く手入れされた山道が足裏を吸い寄せてくれるのか、思いのほか良いペースで歩けます。船窪第2ピークに着いたのは9時少し前。早くはないけれど、順調かな?不動岳への登りもきつく息切れしながらも、12時半頃到着。実に6時間を要しました!途中、まりさんが南極越冬を終了しての帰路、新シラセ号の中でご一緒したと美人記者さんとすれ違い、感動の再会。このことが、今回の山旅が素敵な出会いの場となるのでは…との、幸先の良い予感をさせてくれたのです。勝野さんの余り食べない山歩きにはとてもついていけず、何度も小休止をお願いし、行動食をいっぱい食べて体力を保ちながら歩きました。若い頃(50代)には何も感じず歩けたのに、不動岳〜南沢岳を越えて烏帽子田圃へ着いた時には、もう10時間を超えていました。「夕食の数を知らせてくるね!」と、まりさんと今ちゃんが先行し、私は17時に烏帽子小屋に到着。烏帽子小屋スタッフ舞子ちゃんのはじけるような笑顔と、小屋のご主人上條氏の手厚いもてなしを受けて、暖かい布団にもぐり込むこと
ができました。山旅初日はこうして終わり、9月2日、第2日目が始まりました。三ツ岳、野口五郎岳の稜線ではものすごい風雨でした。岩にしがみつきながら、必死の思いで先行するリーダーの後を見逃さないようについて行き、野口五郎小屋に10時前に到着。荒天ということもあり、今日はここでお世話になることに決めました。この先、雲の平〜折立までの記録は、改めて書かせていただきますので、どうぞお楽しみに…(^_^)さて、この山旅から1ヶ月が過ぎ、今、船窪小屋は錦秋の候となりました。不動沢も船窪岳も、針の木谷も北葛岳も、そして七倉沢も『紅葉織り成す秋爛漫』です。あと10日足らずで小屋閉めとなりますが、夏の間に来られなかった皆様、どうぞおいでくださいませ。私とお父さん、スタッフ全員でお待ちしております。尚、ペンバさんですが、建築中のゲストハウスもほぼ出来上がり、今はジリからエベレスト街道をトレッキング中との連絡が入りました。可能な方は、どうぞ、カトマンズのペンバ・ラマ・シェルパのゲストハウスをご訪問いただければ
と思います。さて、最後に、皆様へのご案内です。今シーズン、小屋開けから小屋閉めまでの船窪小屋の様子や様々な人間模様を取材しておりますテレビ信州さん。これまで3回程撮影があり、中には空撮もありました。次回は来週、小屋閉めの様子を取材に来られるそうです。また、番組は、10月26日、朝9時半から、テレビ信州のチャンネルフォーで放送されるそうです。現時点でタイトルは未定だそうですが、どうぞ楽しみにお待ちくださいませ。それでは、今日はこの辺りで失礼いたします。松澤寿子


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