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ふなくぼだより
3月17日 曇のち雨
今日は私共の大切だったお客様であり、後援者であった小松幹男先生の命日です。8年前の3月17日、京都の病院で命を落されました。
先生は40年前の夏、長女を連れて船窪小屋に滞在していた時、奥様と同僚方5名で縦走して来られました。一昨年、NHKで放送された"小さな旅"の時、古い写真が紹介され、数少ないお客様に私共家族が支えられたこと等が語られました。あの時はほんのひとこまでしたが、40年間、毎年何回かおいで下さり、大勢のグループの方々と共に楽しみながら私共を励まし、支えて下さったのです。夫、宗洋のことを大事に思って下さり、肉親以上の存在でした。宗洋とは容ぼうも似ておりましたので、皆様からは兄弟のように思われていました。小松ご夫妻にはお子様が無く、私共の子供を我が子のように可愛がって下さいました。夏はテニスをされ、冬はスキーにと、休日を楽しんでおられました。先生がピアノを弾き、奥様が歌うとグループの皆さんも一緒に歌って、ベルグハウスでも楽しんでおられました。
あんなに健康でスポーツが大好きだった先生が70歳でこの世を去られた時は、只、驚きでした。先生が逝かれた3年後に奥様も又、骨ガンでご逝去されたのでした。先生亡き後、奥様にはもっともっと長く生きてほしかった…、と悔やまれてなりません。
先生も奥様のグループの皆様も大好きだった馬の背の最上部、白馬連峰と上信越国定公園の山々が眺望できる場所にお二人の慰霊所があります。私と夫は毎年、この3月17日の命日に必ずこの場所へ行き、お二人と酒くみ交わすことにしております。夫がリュックに先生の好きだったウィスキーを入れ、朝方8時に2人で出掛けました。今日はあいにくの天気ですが、滑り始めた頃は曇り、馬の背を通過する頃から小粒の雨がゴンドラのガラスに当たり始めました。栂の森でリフトに乗る頃には"アラレ"となって顔に当り始めました。あまり降らないで欲しいと祈りましたが、リフトを降りる頃には、アラレと小雨が大分降りました。スキーをぬぎ、慰霊の場所でウィスキーを出しました。リフト番の可愛い女の子が"そこは立入禁止になっています"と注意に来ました。"はい、分かっています"と答えると、そのまま帰って行きました。"先生来たよ、元気でやっていますからね"と言って、2人で同じ盃で飲み、小雨に煙り始めた白馬連峰と雨飾、焼山、戸隠等を眺めて写真を撮り、早目にスキーで下山しました。サングラスに雨粒がかかり、視界もあまりよくないので、林道に入って滑ってきました。滑りながら小松先生や奥様と滑った昔のことを思い出し、涙が溢れてきました。小雨の降る中、リフトに乗って鼻水が流れ、帽子にツララが出来たこと、ゲレンデ整備されていなかったこと、その他色々のことが脳裏に浮かんできます。あの頃があったから今があり、ベルグハウスも健在でいられるのです。私と夫が元気でいる限り、今の日を忘れることなく、馬の背のあの場所は毎年通うことを心に誓ったのでした。


"在りし日の 二人の面影 慕いつつ
             滑りゆく峯は 小雨に煙りて"

"葉タバコを 吸いていこえる 君の背は
             小雨に煙る 山の彼方に"


松澤 宗洋 寿子


 
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