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北アルプス発・ふなくぼだより


松澤寿子の「2002年・夏小屋番を振り返って」
松澤寿子です。梅雨空も空け切らない6月29日 七倉尾根を登り船窪小屋に着いた。夏山シーズン小屋開きの為である。 ヘリコプターによる荷揚げと共に登る予定であったが、天候が定まらない毎日だったので、私は単身小屋に入ることにした。

小屋は昨年秋に小屋仕舞いをした時のままの姿で、午後の日差しの中に佇んでいた。すべての窓は鎧戸をボルトで内側より締めてある。 シャッターの錠が破れたので玄関はしっかり釘づけになっている。夫に教えられたバールの隠し場所を探し、ゆるめに打ち付けてある処所をこじたら簡単に釘は抜け、玄関にはめられた板戸はすぐに外すことができた。入り口の戸を開けると懐かしい小屋の匂いと共に昨年忙しく梱包した荷物が囲炉裏の周りに置かれていた。「ただいまーっ」と大声でさけび、暗い小屋に入った。急いで窓々のボルトを緩め、鎧戸を外すと、小屋の中はサッと明るくなった。よし、今日から私の夏山シーズン小屋番のスタートである。
船窪小屋のランプです。
左・ペンパラマさん、中央・私松澤寿子、右・美代ちゃん 小屋開きから3ヶ月余り、今シーズンもいろいろと楽しいことがありました。6月末に発刊された山渓JOYの「脱 定番」特集のトップページに掲載されたのを見て、「若しかしたらお客さんがいつもの年より増えるかも知れないね」と美代ちゃんと話をしていました。7月始めは例年通り誰も来てくれませんでした。
駒草が咲き、白根葵が美しく咲き誇っているのにもったいないねとぼやいていました。ところがネパールからのペンパラマさんを迎えた中旬ころからお客さんが増え始め、海の日を境に例年より大勢のお客様を迎えることができました。

7月末には船窪小屋開け以来最高の人数となり、二人で喜びました。ペンパラマと夫宗洋は、天気を見ては稜線の道直しに出掛け、草刈やハシゴつけ、ロープ張り等に精を出し、夕方疲れて帰る毎日でした。

特筆すべきことは、今シーズンから美代ちゃんが、南米のフォルクローレ(民族音楽)の楽器である「チャランゴ」を習い始めたことです。シーズン始めは少しおぼつかないように聞こえた、名曲「コンドルは飛んでいく」が毎日の練習により、8月の始めには、素人の私が聞いても見違えるように上達したのです。彼女の持ち前の目張り強さと頑張りが積み重なってのことと思うのですが、夜、囲炉裏端で奏でられるチャランゴの音色はとてもさわやかで、かわいらしさを宿した彼女の雰囲気と相まってお客様を喜ばせてくれたことに、私は最も感謝しています。
そして、彼女の演奏を暖かく見守り、聞いてくださったお客様にもお礼を申し上げます。

ネパールから来てくれたヘルプのペンパも素朴で楽しい人でした。ヒマラヤ山脈のトレッキングの案内を仕事としているシェルパのサーダー(シェルパ頭)です。太って体格のいい彼も船窪小屋に来て、あちこち登り下りしている間に8kgほどの体重減となり素敵な紳士となりました。今ごろはカトマンズで大もてとなり、奥さんを悩ませているかもしれません。
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