北アルプス ランプの山小屋　船窪小屋

余り寒さを感じない朝。明るくなるのは５時半を過ぎてからです。昨夜から宿泊しておられるお客様、扇沢かた入り、槍までの縦走予定で入山され、３０Ｋ近くの荷物を担いで来られました。
８月下旬に１０日間の縦走をした柴野ちゃん。装備の不備により、いろんな経験をしたとか。今日来られたお客様としっかり話し込んでいます。シュラフのこと、食糧のこと、地図のこと、
縦走もテント泊となると荷物がかさんでしまいます。その他いろいろと話は尽きないようです。彼は今回紅葉がこんなに進んでいるとは思っていなかったようです。「針ノ木峠から蓮華、北葛、七倉の渓谷の
見ほれて、ゆっくり歩けました。」と今回の山行で得したのはこの紅葉の稜線でしたと言っています。
昨夜来の風と今日の雨でこの紅葉も終わりになりました。ダケカンバの黄葉も落ち尽くし、ねずみ色と白の混在する曲がりくねった幹が初冬の訪れを感じさせてくれます。
小屋開けから毎日働いてくれた厨房で唯一の近代兵器”フライヤー”の油を交換し、次の週から小屋閉めに備えることにしました。厨房の中も新しいアルミシートに張替え、綺麗になりました。
明日は９月も終わり、月末の用事があるというお父さんと共に柴野さんも下山することになりました。
「柴野ちゃんありがとう！」の気持ちを込めて、寿子が下山した折に買い求めて来たパウンドケーキにデコレーションして、ティーパーティーに備えます。
今夜はお客様ゼロです。幾分寂しそうな表情をみせるペンパさん。涙声で感謝の気持ちを述べてくれた柴野さん。身内だけのささやかな送別会の夜です。
炉端の夜はゆっくりと過ぎて行きます。柴野さん、ペンパさん、お父さん、お母さん、それぞれの重いが炉にに燃える温かい炭火の上に注がれていました。

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